こういった悩みに答えます。
この記事を書いた人
馬越脇 崚(まごえわき りょう)
・フリーランスのサックス奏者
・TV出演、プロオーケストラ、舞台音楽、有名ライブハウス出演多数
・講師歴10年以上
本記事の内容
・リードをなぜ育てるのか
・僕が実際にやっているリード管理と選び方について
・おすすめの管理方法と環境作りについて
サックス奏者なら1度は必ず思ったことがあるかと思います。
調子が悪いときにリードが吹きづらいと言うと、
こんな風に言われることでしょう。(勝手な想像)
いっそリードを使って音が出る仕組みじゃなければいいのに・・・なんて思ったこともありましたが、金管やフルートの方々を見ているとそれはそれで大変そうですよね。結局何を吹いても難しいのは間違いないと思います・・・。
そうなったらもうリードを受け入れて上手くやっていくしかないのです!
というわけで、今回は僕が何年も試行錯誤したリード管理方法について解説していきたいと思います。
現状ではかなり安定的に使えるリードを集められているので、それなりに参考になるかと思います。
では早速解説していきます。
リードをなぜ育てるのか
これはそもそもリードが何でできているかを知る必要があります。
何でできているのか
リードの素材はケーンというもので、葺の仲間です。植物でできているのです!
そのケーンを乾燥させて割ったものがリードなので、育ち方や乾燥の仕方、また割れ方も全てがバラバラなので、リードの吹きやすさにムラがあって当たり前なのです。
どういった種類があるのか
リードには本当にたくさん種類があり、全部解説していたら記事がとてつもなく長くなってしまうので今回は割愛します。ただ、ざっくり分けるとこんな感じです。
【ファイルドカット】
クラシック、吹奏楽向きとされているリード。リードの根本部分の表皮がカットされているので、音がまとまりやすく立ち上がりがいいです。ただ、ジャズ向けのリードでもファイルドカットのものはあるので、絶対クラシックで使わないといけない!なんてことはないです。
【具体的な商品名】
・バンドレン トラディショナル(青箱)
・ダダリオ レゼルブ
・ダダリオ ジャズセレクト ファイルド(このリードはジャズ向けですがファイルドカットです)
などなど
【アンファイルドカット】
ジャズ向きとされているリード。リードの根本部分の表皮がカットされていないので、低い倍音が入りやすくダークな音になりやすいです。ファイルドカットのリードに比べてサブトーンも出しやすいため、そこがジャズ向きの理由かと思います。ただ、こちらもジャズでしか使ってはいけないということは決してありません。
【具体的な商品名】
・バンドレン JAVA(緑箱)
・ダダリオ ジャズセレクト アンファイルド
・ダダリオ ラ・ヴォーズ
などなど
リードを育てるってどういうことなのか
リードのカットの種類があるということは分かったかと思います。ではリードを育てるというのはどういうことなのか・・・
それはつまり、リードを水分にならす作業!
だということです。リードは植物を乾燥させたものなので、水の吸い方にかなりムラがあります。さらに、カットもこれだけ種類があって厚さも個体差がかなり激しいので、自分の都合のいいようにリードに水分を行き渡らせる必要があります。
初心者の方でよくありがちなのが、新品のリードを開けてすぐにガンガン吹きまくって、そのままリードが死んでしまうということです。
注意ポイント
新しいリードはかなり水分を吸います!
つまりリードは最初こそ気をつけてあげないとせっかく買ってもすぐに無駄になってしまいます・・・
ということで、実際に僕がやっているリードの育て方を解説していきたいと思います!
僕が実践しているリードの育て方と選び方
今は仕事でジャズもクラシックも両方やるので、それぞれ別のマウスピースとリードを用意して若干異なる調整方法をとっています。
クラシック用のリードについて
クラシックではこんなセッティングでやっています。
・マウスピース Selmer S90 170
・リガチャー JLV GP
・リード D'Addario レゼルブ 3.0+
マウスピースが狭いので、リードは若干厚めのものを選んでいますが吹き心地としてはかなり軽い方だと思います。僕の場合は、クラシックのセッティングにおいて一番の重要度は音の立ち上がりです。もちろん音色も大事ですが、音色の美しさは大前提なのでリードに振り回されずに綺麗な音が出せるセッティングを心がけています。(本体やリガチャーにGPを使うことでまろやかさと煌びやかさを出す感じです)
このクラシックセッティングの場合、最初の吹き心地がそのリードの吹きやすさ
という基準で考えています。そのため、リードを開けて最初に吹いたときに吹きやすいものはすぐ戦力へ送り、若干抵抗を感じたりタンギングがしづらいなど問題があるリードは、印をつけて補欠として管理しています。その後、大体1週間様子をみてそれでも改善しなければ、思い切って捨てます。第一印象でほとんど決めてしまっていますが・・・。笑
いつまでもグダグダ残していると、何が吹きやすくて何が吹きづらいのか、自分のせいで吹きづらいのかリードが悪いのか、などわからなくなってきてしまうので、吹きづらいリードは極力ストックしないよう気を付けています!
また、実際にリードの慣らし方としてはこんな手順でやっています。
リード管理の手順
step
1開けたてのリードで、吹きやすいものとそうでないものを分ける
step
2吹きやすいものは1分くらい吹いたら交換していく
step
3新しいリード達を2周分くらい試したらその日は吹かない
これは新しくリード開けた当日の流れですが、2日目以降はステップ2と3をひたすら繰り返していきます。
クラシックの場合はとにかく、最初の吹きごこちが全て!
また、リードを買い換えるタイミングとしては音が詰まってきたらというつもりでいます。そもそも吹きやすいリードを選んでいるので、長く使っていても比較的吹きやすいのですが、やはり音色に詰まりが出てくるというか、使っていると音の線が細くなってくる感覚があるのでそれを感じたら一気に全部捨てて入れ替えています!笑
吹きづらいものだけ捨てて、そこに新しいのをいれるというやり方をやっていたのですが、戦力になっているリードの中でも吹きごこちや音色に若干ばらつきが出てしまって、自分のコンディションの維持に不便を感じたので、一気に入れ替え式を実践しています。これだと、シーズンごとにリードの入荷時期は揃っているので、大体同じ抵抗感や音色、吹き心地で吹くことができるのでかなりおすすめです!
一気い入れ替えはすこし勇気が入りますが、またいいやつがくるはず!と信じて捨てています。笑
ジャズ用のリードについて
ジャズではこんなセッティングでやっています。
・マウスピース Gottsu Sepia tone VI 5
・リガチャー Woodstone kodamaⅡ
・リード Vandoren ZZ 2 or 2 1/2
こちらも結構軽いセッティングになっています。ジャズのセッティングにおいて僕が重要視していることは、サブトーンとフラジオが出しやすいかということです。音色はクラシックの時と同じようになるべくリード以外のセッティングで作ってしまって安定感を出しているので、あとはサブトーンとフラジオの問題になります。
このジャズセッティングの場合、開けたての吹きやすさより1週間後の吹きやすさ重視という基準で考えています。
クラシックの時は最初の吹き心地基準でしたが、ジャズ用のリードの場合安定するまで1週間ほどかかるような気がしています。クラシックの時よりも大きい音でよりリードを多く振動させるのでその分消耗が激しいのかな??と勝手に想像しています。笑
なので、最初に吹きやすくてもすぐ死んでしまったり、逆に最初吹きづらかったのに気づいたらメインのリードになっていたなんてこともジャズ用のリードではよく起こります。
リードを慣らす手順はクラシックの時と全く一緒ですが、リードを入れ替えるタイミングとしてはその都度吹きづらくなったものから新しいものに差し替えるという方法をとっています。
こちらもクラシックの時とは真逆の発想ですが、ジャズ用のリードは安定まで時間を要するのでその都度少しずつ鳴らしていく必要があるのでこのような形になっています。クラシックは最初が重要なので、その地点を揃えるというような感じです。
ざっくり表みたいにしてみました↓
馬越脇の個人的リード事情
【重要視している点】 | 【リードの判断基準】 | 【リードの入れ替え時】 | 【音色の傾向】 | |
クラシック | 音の立ち上がり | 開けたての音の立ち上がり | 音が詰まってきたら全部 | 明るくて軽い |
ジャズ | サブトーンとフラジオ | 1週間後の状態 | その都度調子悪いものを入れ替え | 明るすぎず低音に倍音多め |
管理方法と環境作りについて
ここまでリードの育成と僕の個人的な好みなどについて解説してきましたが、結局どうすればいいのかというのをこちらでまとめたいと思います。
リード管理において大事なこと
・ローテーションの徹底
・リードを選ぶ環境の固定化
・湿気コントロール系に頼りすぎない
順番に解説していきます。
ローテーションの徹底
これは先ほど解説した、開けたてのリードの吹き方のことです。とにかくこのステップでやってください!
リード管理の手順
step
1開けたてのリードで、吹きやすいものとそうでないものを分ける
step
2吹きやすいものは1分くらい吹いたら交換していく
step
3新しいリード達を2周分くらい試したらその日は吹かない
これであとは2,3を繰り返すだけです。うっかり吹きすぎてしまうと、即死なんてこともよくあります!笑 新しいリードはたくさん吹きたくなりますが、そこはグッと堪えて少しずつ慣らすようにしましょう。
そして、ジャズもクラシックも1週間様子をみましょう!
そのときにようやくリードを取捨選択をすればいいと思います。僕の経験上、1週間以上がすぎてから急激に良くなるというリードはあまりないので、この基準でいいと思います。もし1週間以上経って急激に吹き心地に変化があったら、自分が変化している可能性があるので要注意です!(良くも悪くも)
リードを選ぶ環境は固定する
これは意外と落としやすいポイントかと思います。普段よく響くところでリードを選んでいたのに、ある日全く響かないところでリードを選んでしまうと普段と全く違う吹き心地のリードを選んでしまいます。なので、なるべくリードを選ぶ環境は固定することをおすすめします。どちらかと言えば、響きすぎるよりかは響かない部屋の方がよりシビアな判断ができるかと思います。また、壁に向かって吹くのか、ピアノに向かって吹くのか、立って吹くか座って吹くかということだけでもかなり変わってきますので、ぜひその辺りも毎回同じ環境でできるように工夫してみてください。
湿気コントロール系に頼りすぎない
僕はこれで結構振り回されました・・・。笑 湿気をコントロールできる袋だったり、プラスチックケースなどかなりの数の商品が開発されていますが、僕は何年か前にかなりの数を試して結構な金額を使ってしまいました。そして分かったことは、これに頼りすぎないということです・・・!
科学の力というのはとても正確で、適度な湿気を常に保ってくれるのはいいのですが、リードをマウスピースにつけてからかなりの時間置きっぱなしになってしまったり、野外の本番で楽器の持ち替えなどある時は、完璧に湿度を管理するのは正直難しいかと思います。練習の段階ではとても調子が良かったリードも、いざ過酷な環境に移ったときに調子が狂ってしまってはどうしようもありません。なので、こういったものを使うのは全く問題ないのですが、過信しすぎると本番などで何が起きるか分からないので、過度な期待をもたずに使用するようにしましょう!
僕は現在、湿度の管理をやめてなるべく通気性が良くて外の環境に近い状態のリードケースにリードを保管しています。これなら、マウスピースにリードをつけっぱなしにして長時間放置しても、最初の状態と比べてそこまで変化が起きてないので割と対処しやすいかと思います。
結構長くなってしまいましたが、僕はこんな感じでリードを育てて管理しています。
サックス奏者である以上どんなリードとも向き合っていかないといけないので、いいリードに巡り合う運も必要ですが、上手に慣らして自分の支配下に置けるようにリードのコントロール技術を上げていきましょう!